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【コラム】 GHS表示の対応、できていますか?  食品添加物メーカーが押さえておくべき基本と実務のポイント

Date:2025.05.23

「GHSの表示って、化学薬品のメーカーだけじゃないの?」
そんな声、添加物メーカーでも聞くことがあります。

でも、実際には食品添加物を製造・出荷するメーカーも、GHS表示の対象になり得ます
とくに業務用・工業用として出荷される製品には、法的義務が課せられているケースが少なくありません。

■そもそもGHSとは?

GHSとは、Globally Harmonized System of Classification and Labelling of Chemicalsの略で、
日本語では「化学品の分類および表示に関する世界調和システム」と訳されます。

国連が提唱した国際ルールで、化学物質の危険性・有害性を共通の分類方法で評価し、その結果をラベルやSDSで統一的に表示する制度です。

目的はひとつ
「誰が見ても、どの国でも、危険な化学品を正しく安全に取り扱えるようにすること」

日本では2006年以降、段階的に導入が進み、現在は労働安全衛生法を中心に、GHSに基づいた表示と情報提供が義務化されています。

■食品添加物メーカーが対象になるケースとは?

ここが重要なポイントです。

「最終製品としての“食品”」はGHSの対象外ですが、
食品添加物そのものは“化学物質”であり、用途や濃度によってはGHSの対象になる可能性があります。

特に以下のような場合は注意が必要です:

  • 業務用や工業用の食品添加物を出荷している(例:酢酸、乳酸、次亜塩素酸Naなど)

  • 他社の原料として供給している

  • 高濃度または純度の高い状態で出荷する

  • 混合品で、一定の危険有害性をもつ成分を含む

このような製品には、GHSに基づいたラベル表示およびSDSの提供が義務となります。

■メーカーがやらなければならないこと

① 製品のGHS分類を行う

  • 自社で製造している添加物ごとに、危険性・有害性を評価し、該当する分類に沿って判断。

  • 単一成分の場合は比較的簡単ですが、混合品は成分ごとの割合・特性による評価が必要です。

② GHSラベルの作成・添付

  • ピクトグラム(絵表示)、注意喚起語(危険/警告)、危険有害性情報などを記載したラベルを容器に貼付

  • 貼付は製品容器本体に明確に行う必要があります。

③ SDS(安全データシート)の作成と提供

  • 労働安全衛生法で定められた16項目の情報を記載。

  • 出荷時には製品に添付または電子的に提供。初回提供と内容変更時は必須。

■対応していないとどうなる?

  • 労働安全衛生法違反による行政指導や勧告

  • 取引先からの受け入れ拒否や信用失墜

  • 万一の事故時に、メーカーとしての責任追及リスク

GHS対応は、いまや単なる「法令順守」ではなく、取引先や社会からの信頼を保つための必須条件となっています。

■うまく対応するための実務的ポイント

  1. 新製品・改訂品は開発段階からGHS対応を組み込む
     → ラベルやSDS作成は後回しにせず、製品設計と同時に進める。

  2. GHS分類の根拠をきちんと保管
     → 監査やトラブル時に、分類根拠の明示が求められることがあります。

  3. ラベルは現場で見やすく・剥がれにくく設計
     → ユーザーからのクレーム回避にもつながります。

  4. SDSはExcelやPDFで管理。更新履歴も残す
     → 複数言語対応が必要な場合は、翻訳ミスにも注意。

  5. 営業・出荷部門との連携を強化
     → SDSが出荷と連動していないと、提供漏れにつながります。

■最後に:法令対応は「取引品質」の一部です

GHS表示やSDS対応は、「製品そのものの品質」だけでなく、
企業としての姿勢や、供給先との信頼関係を支える重要な要素です。

食品添加物は“食”に関わる製品であるからこそ、
安全・安心・信頼のために、正しく・わかりやすく情報を伝える義務があります。

「品質表示の一部」として、GHSラベルとSDSの整備、今一度見直してみませんか?

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