Date:2025.05.16
「HACCP? あぁ、大変だけどやってますよ。要求通りに様式も揃えたし、記録も書いてます」
そう語る社長の顔には、明らかなか“やらされ感”がにじんでいました。
一方、「HACCP導入後に無駄な作業が減って、社員の負担も軽くなったんだよね」と語る別の会社の役員は、まるで新しいビジネスチャンスを見つけたような雰囲気で話しています。
成功している企業とそうでない企業、その差はどこからくるのでしょうか。
HACCPを“義務だから仕方なくやる”と捉えている企業は、たいていその場しのぎで終わります。形ばかりの様式、意味を理解しない記録、誰も見直さないチェックリスト。
これでは、業務も品質も改善されません。むしろ時間と資源の浪費です。
一方、HACCPを「継続的改善」の仕組みと捉えた企業では、業務のムダが見える化され、仕事の流れが合理化されます。
これはすなわち生産性の向上であり、利益の改善にもつながる。食品安全と経営効率が両立できるのです。
「とりあえず通ればいいから」と外部に丸投げし、社内には理解者がゼロ。そんな状態では、HACCPはただのコストで終わります。むしろマイナスです。
逆に、社長自身が「HACCPって会社の未来に関わる仕組みだ」と本気で理解し、現場と一緒になって取り組んでいる会社は強い。トップの覚悟が現場の空気を変えます。
継続的な成長や企業の存続は、結局のところ経営者の意思と姿勢がつくるものです。
今の時代、品質と安全は「できて当たり前」。
HACCPをしっかり運用できている企業は、対外的な信頼性が増し、取引先や消費者からの評価も高まります。
これはまさに競争優位性の確保です。
さらに、HACCPによって工程が安定すれば、教育や引き継ぎもスムーズになります。人材の成長やチームの生産力もアップします。
HACCPは、安全性・効率性・教育性、これらすべての“土台”になり得るのです!
食品業界は、社会から“持続可能な製造”を求められています。
「今日さえ何とかなればいい」では、明日は生き残れません。
HACCPの本質は、リスクを管理し、改善を続ける“習慣”を組織に根付かせること。
それは単なる一過性の制度ではなく、企業が長く存続するための文化でもあります。
HACCPは、単なる記録やルールの話ではありません。
それは、会社がどれだけ“未来”を見ているか、どれだけ“変化”と向き合えるかを映す鏡のような存在です。
やらされ感で終わるか、経営資源として活用するか。
HACCPは企業に、そう問いかけているのかもしれません。
文:Y&Kコンサルティング 山田
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