Date:2024.10.29
みなさんこんにちは。
ISOやFSSCに活用できるフレームワーク紹介コラム、今回は「PEST分析」です。
PEST分析とは、ざっくり言うと、外部の経営環境を理解するために活用されるフレームワークです。企業が成長し続けるためには、内部環境だけでなく外部環境の変化にも目を向けることが不可欠です。外部環境の分析を行う際、非常に有効なフレームワークの一つが「PEST分析」なのです。これは経営戦略の基礎であり、ビジネスのリスクや機会を見極めるために活用されるツールなのです。
PEST分析とは?
PEST分析は、Political(政治的要因)、Economic(経済的要因)、Social(社会的要因)、Technological(技術的要因)の4つの視点から外部環境を分析する手法です。これにより、企業が影響を受けやすい外部要因を体系的に整理し、戦略に反映することができます。
Political(政治的要因)
政治的要因は、法律や規制、税制、政府の方針などが含まれます。例えば、食品業界であれば、食品安全基準や輸出入規制の変更が企業の製品開発や販売に影響を与える可能性があります。
Economic(経済的要因)
経済的要因には、景気動向、為替レート、インフレ率、失業率などが含まれます。消費者の購買力や市場の成長率なども、売上や利益に直接的な影響を与えるため、十分に把握することが重要です。
Social(社会的要因)
社会的要因は、消費者のライフスタイルや価値観、人口構成の変化などを指します。たとえば、健康志向の高まりが食品業界における商品の低カロリー化やオーガニック商品の需要を増加させることが考えられます。
Technological(技術的要因)
技術的要因には、新技術の開発や技術革新の進展が含まれます。これらは、製品の競争力や生産効率に大きく影響を与えるため、新技術の導入や研究開発への投資が必要です。
3C分析との違い
PEST分析が外部環境を広く俯瞰するためのフレームワークである一方で、3C分析は顧客(Customer)、競合(Competitor)、自社(Company)という3つの視点から企業の競争力や戦略を考える手法です。つまり、PEST分析が主にマクロな外部環境の把握を目的としているのに対し、3C分析は市場内での自社のポジションや競争優位を探るために使われます。
3C分析とPEST分析を併用することで、外部環境と内部環境の双方をバランスよく分析でき、より精度の高い経営戦略の立案が可能となります。
ISO 22000の「組織及びその状況の理解」への応用
ISO 22000の食品安全マネジメントシステムにおける要求事項「4.1 組織及びその状況の理解」では、組織が自社を取り巻く環境を包括的に理解することが求められています。PEST分析は、外部環境の要因を分析し、リスクや機会を特定するために非常に有効です。たとえば、食品安全に関する規制の強化や技術革新に備えて、食品業界のトレンドや規制の動向を分析することで、ISO の要求事項に対する対応力を高めることができます。
また、3C分析と組み合わせることで、顧客のニーズや競合の動向を把握し、ISO 22000の目的達成に向けた戦略をさらに具体化できます。こうして、PEST分析はISO 22000に限らず、他のマネジメントシステムの状況分析にも応用できる汎用的な手法です。
以下に、PEST分析がどのようにISO22000要求事項の「組織とその状況の理解(外部環境の理解)」に役立つかを示します。
1. 政治的要因(Political)
政府の規制や法律、国際的な食品安全基準などの政治的要因を分析することで、組織が順守すべきルールや方針を明確化できます。たとえば、食品に関する新たな輸入規制や、特定の添加物の使用禁止といった法規制は、ISO 22000のリスク評価や管理方法に直接影響します。PEST分析を行うことで、組織がこうした規制の変化を見逃すことなく、必要な対応策を構築できます。
2. 経済的要因(Economic)
原材料の価格変動や景気の変動、顧客の購買力など、経済的要因も食品安全に関わります。たとえば、輸入品の価格上昇に伴って、安価な代替品が求められると、品質にリスクが生じる可能性があります。PEST分析によって経済的な変化を把握することで、コスト削減の際に必要なリスク管理を見落とすことなく、適切な対応ができます。
3. 社会的要因(Social)
消費者の食品安全への関心や食生活の変化、健康志向の高まりも組織のFSMSに影響を与えます。たとえば、アレルゲンの表示義務やベジタリアン・ヴィーガン向け食品の需要が増えると、対応する製品開発や管理が必要になります。また、近年気候変動が問題化される中で、企業の「気候変動への責任」が消費者の購買決定に影響するケースも増加しています。
(※2023年9月、ISOは全てのマネジメントシステム規格に「気候変動への配慮」を盛り込む形で追補改訂を実施しました。)
PEST分析を通じて社会的な変化に対応することで、消費者ニーズに合致した製品づくりやリスク対応が可能になります。
4. 技術的要因(Technological)
新たな製造技術や品質管理システムの導入により、食品の安全性をさらに向上させることができます。たとえば、トレーサビリティの向上や、リスクの早期発見を可能にする検査技術の導入などです。技術的な要因を把握することで、効率的なFSMSの構築に向けた新しい方法やツールを活用しやすくなります。
PEST分析の活用ポイント
1. 情報収集を定期的に行う
外部環境は常に変化しています。市場や社会の動向を定期的に見直し、最新情報に基づいた分析を行うことが重要です。
2. リスクと機会を明確にする
PEST分析から得られた情報を基に、将来起こり得るリスクと、成長のための機会を明確にします。戦略の修正や、新規事業への投資判断の材料にすることができます。
3. 他のフレームワークと併用する
3C分析やSWOT分析など、他のフレームワークと併用することで、外部・内部環境を総合的に理解し、経営判断に役立てることができます。
まとめ
PEST分析は、企業を取り巻く外部環境を広い視野で理解し、リスクと機会を見極めるためのフレームワークです。3C分析と同様に経営戦略の基礎となる手法であり、ISO の「組織及びその状況の理解」にも応用可能です。PEST分析を活用することで、マクロ環境の変化に柔軟に対応し、競争力のある戦略を構築する基盤を築くことができます。
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